骨粗しょう症とは
骨粗しょう症とは、骨量(骨の強度のことで、骨全体に含まれるカルシウムなどのミネラル成分量)が低下してしまうことで、骨がもろくなっていき、骨折するリスクが高くなっている状態を言います。なかでも、背中や腰、手首、足の付け根、肩といった部位に骨折がよく見られます。
なお、発症しやすいタイプとして、高齢者、女性、遺伝的要因、早期の閉経、疾患による卵巣の切除といったことが挙げられますが、骨粗しょう症は大きく原発性骨粗しょう症と続発性骨粗しょう症の2つに分類することができます。
原発性骨粗しょう症とは、加齢や閉経が原因の場合が大半ですが、そのほかにも不摂生な生活習慣、遺伝的要因(骨粗しょう症になりやすいタイプ)、卵巣を切除、無理なダイエットなどが原因で発症することもあります。年を経るごとにそのリスクは高くなり、女性の患者数は男性の3倍以上と言われています。一方の続発性骨粗しょう症は、ある特定の疾患(関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病、動脈硬化、甲状腺疾患など)に罹患している、薬の副作用(ステロイド薬の長期服用など)といったことが原因の場合が多いです。
症状に関してですが、骨量が低下していく中で自覚症状が現れるということはありません。そのため、骨量はさらに低下していくようになります。その後、転倒(尻もちや転んで手をつくなど)やくしゃみをしたことで起きた骨折、骨量が減少したことで体の重みを支えきれず背骨が押しつぶされる圧迫骨折、大腿骨近位部や橈骨遠位端の骨折が起きること(脆弱性骨折)で発症に気づくケースが少なくありません。なお、圧迫骨折は強い痛みが現れないので、知らない間に骨折したということも珍しくなく、腰や背中の痛み、脊柱の後弯変形、高齢になって身長が低くなった(4cm以上)といったことで検査をし、発症に気づいたというケースもよく見受けられます。
閉経後女性の発症メカニズム
骨粗しょう症は、前でも触れましたが閉経後の女性に発症しやすい特徴があります。それは生理的なものでもあるのですが、女性は閉経を迎えると、エストロゲン(女性ホルモン)が著しく減少するようになります。このエストロゲンには、骨の新陳代謝に対して骨吸収のスピードを和らげる成分が含まれているので、減少してしまうと骨吸収のスピードを一気に加速させることになり、骨形成が追いつかない状態になっていきます。これが慢性的に続くことで骨はまるで鬆(す)が入ったようにスカスカになってしまい、骨自体がもろくなっていくのです。これが閉経後の女性にみられる骨粗しょう症発症のメカニズムです。
なお、多くの女性は更年期(45~55歳)の年代に差し掛かると閉経を迎えます(個人差はあります)。そのため、更年期世代もしくは間もなく同世代を迎えるという女性につきましては、骨粗しょう症の検査を一度受けられることをお勧めします。
検査について
検査を行うにあたっては、まず骨粗しょう症のタイプが原発性・続発性のどちらかを見極める必要があります。その結果、続発性であれば原因となる病気の治療や原因とされる薬の服用を減らす、もしくは中止するといったことを行うようにします。原発性骨粗しょう症であれば、以下の検査を行います。
脆弱性の骨折がある場合は、X線撮影を行います。椎体や大腿骨近位部に骨折を確認した場合は、骨粗しょう症と診断されますが、詳細にみる必要がある場合はCTやMRIによる検査を行うこともあります。また、その他の部位の骨折(橈骨遠位端、上腕骨近位部、下腿骨など)や脆弱性の骨折がない場合は、骨密度測定、血液検査(骨代謝マーカー含む)を行います。
なお骨密度とは、骨の強さを判定するための数値のことで、骨を構成するカルシウムなどのミネラル成分がどれだけ含まれているかを調べるものです。その数値とは、骨の単位面積当たりの骨塩量で算出されます。骨密度測定には、DXA、QUS、QCT、RA(MD)など様々な測定法がありますが、最もよく行われるのがDXAです。
DXAについて
DXAは、2つの異なるエネルギーのX線を利用して骨密度を計測する測定法で、大きなDXA装置であれば測定台に被検者の方が仰向けになることで測定できます(前腕部を測定するだけの小さな装置もあります)。検査自体は短時間で済みますが、放射線を用いますので被曝します。ただし、その量は胸部X線撮影の数十分の一程度と言われています。
測定方法ですが、全身を行うことも可能ですが、多くは腰椎と大腿骨近位部で測定します。測定の結果、脆弱性骨折のある方で、骨密度の測定値がYAM(若年成人平均値:腰椎は20~44歳、大腿骨近位部は20代の骨密度の平均値)の80%以下の測定値が、脆弱性骨折のない方では70%以下の測定値が出た場合(70~80%未満は骨量減少と判定)に骨粗しょう症と診断されます。
治療について
骨粗しょう症(原発性)は、生活習慣を改善することで、予防や治療になることから糖尿病や高血圧症などの生活習慣病と同様に食事療法や運動療法が基本となります。また、検査などの結果から骨粗しょう症との診断を受けた場合は、直ちに薬物療法が行われます。
食事療法と運動療法
食事療法では、カルシウムの吸収を促進させるビタミンDを含んでいる食品(豆腐、椎茸、牛乳など)、コラーゲンをつくるたんぱく質を多く含む食品(大豆、肉、魚など)、カルシウムが骨へ沈着するのを補助するビタミンK(納豆、ほうれんそう、モロヘイヤ、パセリ など)を多く含む食品を積極的に摂取するようにします。なお、リン、ナトリウム、カフェイン、アルコールなどカルシウムの尿中排出を促進させる成分を含む食品は避けるようにします。
運動療法では、骨強度を上げる必要があるので、骨に適度な負荷をかけるようにします。理想はジョギング程度ですが、難しい場合は早歩きやウォーキング程度でも十分ですが、毎日継続的に行うようにしてください。また、転倒を予防するために体幹や筋力も鍛えます。具体的には、スクワット、ダンベル、筋トレマシンによる筋力強化、1分間の片足立ちやステップを利用した上下運動などによる体幹強化です。
このほかビタミンDを合成させるための適度な日光浴、喫煙者は禁煙を行う、骨への衝撃を減らすためのプロテクターの使用といった環境改善も大切です。
薬物療法について
また骨粗しょう症との診断を受けたら、上記の治療と並行しながら同疾患で使用されている薬剤を使用します。種類としては、骨代謝を調整させる(腸管からのカルシウム吸収を促進指させる)、骨吸収を抑制させる、骨形成を促進させるなど、効果は様々ですが、いずれにしても骨量を維持するために服用するものです。使用する薬については医師が患者様の病態などをしっかり把握した後に適切とされるお薬を処方いたします。主な治療薬は次の通りです。
骨代謝を調整する薬
- 活性型ビタミンD3製剤
- 腸管(とくに小腸)からのカルシウム吸収を促進させる効果がある。骨芽細胞の熟成を促す作用もある
骨吸収を抑制させるお薬
- ビスホスホネート
- 骨吸収を抑制させるお薬の第一選択薬です。骨吸収を強力に抑えることで骨形成を促進、骨密度を増やす効果が期待できます。毎日服用する場合、週1回の服用など薬剤の種類は様々で点滴の場合もあります。
- SEAM(選択的エストロゲン受容体作働薬)
- 女性ホルモン(エストロゲン)と同様の働きが期待できるお薬で、エストロゲンのように骨吸収を抑制する効果があります。1日1回の服用で食事は時間の制限を受けることはありません。また乳がんを抑制する効果があります。閉経後早期の女性に使用されることが多いです。
- カルシトニン製剤
- 疼痛を緩和させたい際に用いられることが多いです。破骨細胞に存在するカルシトニン受容体に作用することで、骨吸収を抑制する効果があると言われています。
- デノスマブ
- 破骨細胞の形成に大きく関わるRANKLEの働きを抑制する効果があるとされる抗体で皮下注射による治療になります。なお注射の間隔は半年に1回程度になります。
- 女性ホルモン(エストロゲン)
- 骨粗しょう症の治療で使われるケースは少なくなっています。服用によって骨吸収のスピードを抑制させる効果はみられますが、服用によって乳がんや子宮がんを発症するリスクが高くなります。