各種注射

各種注射により痛みの治療について

各種注射

各種注射とは

整形外科領域の疾患で、局所的な痛みや炎症を抑える治療としてよく用いられるのが注射療法です。そもそも痛みというのは、体に生じた異常を知らせるサインとしての役割もあるのですが、その原因が判明した後も続く痛みというのは、生活の質(QOL)を下げることも考えられ、もはや害悪でしかありません。

当院では痛みの原因を診察する手順として、問診、視診、触診や計測(関節可動域、四肢長、周径)のほか、必要な場合は、画像検査(X線、エコー など)、関節液検査なども行うなどして、診断をつけます。

痛みの元を特定し、注射による鎮痛効果や抗炎症効果が期待できる場合は、関節腔や硬膜外腔などから薬剤を注入する注射療法を行います。主な注射療法は次の通りです。

注射療法が適応となる主な疾患

  • 関節リウマチ
  • 変形性膝関節症
  • 肩関節周囲炎
  • 急性腰痛
  • 椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 肩こり
  • 筋・筋膜性疼痛 など

当院で行う主な注射療法

関節内注射

●関節内注射とは
関節内注射とは、関節内に注射によって薬剤を注入する方法を言います。具体的には、関節穿刺による薬剤の注入で、種類としてはヒアルロン酸ナトリウムとステロイド剤があります。主に肩関節や膝関節などの痛みや炎症で用いられます。

ヒアルロン酸ナトリウムについては、関節液や目の硝子体などによく含まれている成分に近いことから副作用が起こりにくいとされ、関節の動きを円滑にさせる効果あると言われています。そのためヒアルロン酸を注入すると関節が滑らかになって可動領域が広がるほか、関節軟骨が修復、あるいは保護するといったことも期待できます。関節内注射は、関節リウマチ、変形性膝関節症や肩関節周囲炎(五十肩)の患者様に使用することが多く、これらの場合は膝関節や肩関節から薬剤を注入します。なお注射の頻度は、週1回の間隔を5週間ほど続け、それ以降は間隔を2週間以上開けて行うのが一般的とされています。

一方のステロイド剤は、抗炎症作用を目的として使用します。多くは内服薬での改善が困難な場合などに用いられます。関節リウマチなどで使用されることが多いですが、長期間に渡っての使用は、易感染性、ステロイド関節症などの副作用を発症させることもありますので、ステロイド剤による関節内注射は、回数制限などをする必要があります。

神経ブロック注射

●神経ブロック注射とは
激痛を感じる原因のほとんどは神経の強い炎症にあるとされ、このような場合は、市販されている消炎鎮痛薬を使用するだけで痛みを抑えるのは難しく、神経ブロック注射を行うことで解消が期待できます。これは、神経や神経の周りで起きている炎症とその痛みについて、局所麻酔薬を直接注入することで痛みの伝わる経路(痛覚の殿堂)を遮断し、「痛み」を抑える治療法です。末梢神経系に直接またはその周囲に薬剤(局所麻酔薬、ステロイド、神経破壊薬 など)を注射します。

注射によって鎮痛効果が現れるようになると血流は改善していき、筋肉のこわばりが解消されるようになります。なお注射は、直接的な効果が必要な部位にのみ現れるという利点があります。そのため適応範囲が全身には及びません。それゆえ注入した麻酔薬が意識に影響することはほぼなく、神経を傷つけることもありません。また注射自体の痛みについては、細い針がチクッと刺す程度なので、それほど心配する必要はありません。

同注射は、急性腰痛、椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、腰部脊柱管狭窄症といった患者様によく使用されます。

トリガーポイント注射

トリガーポイント注射とは
トリガーポイントを直訳すると「痛みの引き金となる場所」のことで、どんな場所かと言えば、押すと痛みが広がる、しこりのようになっている部分です。そのポイントは肩、背中、腰など様々な箇所で見受けられます。これら疼痛を強く感じている部位に局所麻酔剤による注射を行って、痛みを緩和させていくようにするのがトリガーポイント注射です。治療の際は細い針を使用しますので、注射による痛みは軽度なものです。適応疾患は、肩こりや腰痛、筋・筋膜性疼痛症候群などです。

このトリガーポイントは、その周りや少しずれていると思われる箇所で関連した痛み(放散痛)を発生させることもあります。これらの痛みが肩、背中、腰などで数ヵ月継続しているのであれば、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)の可能性も考えられます。なおMPSとは、筋膜を原因に2、3の筋に限定した慢性的な疼痛が現れる疾患で、トリガーポイントも存在します。発症の有無は超音波検査で確認できます。